二人は何か囁き合っているようだった。


仲のいい兄弟のようだ。




少女がくるっと振り返った。



一度だけジキルに柔らかい微笑みを向けると、


ジキルのやったリンゴを持ち、


少年に手を引かれ人混みに消えた。







「………………」



ジキルはしばらく少女の消えて行った、雑踏を見ていた。



心の中に懐かしい笑顔が思い出される。


つい昨日の事のように。




胸がジンと熱くなった。




確証など何処にもない。


だが、ジキルは不思議な感覚の正体が、解ったような気がする。





「ゾルレン……?」


リンゴを拾い終えたランが呆けたように街角を見続けるジキルに声をかけた。




「おっ!悪いな」


振り返ったジキルの表情は明るい。




―――オレは、お前が幸せなら、……それでいいんだ




トルティアの空には目映い太陽が輝いている。

街に人々の活気が溢れる。



太陽が、あの二人の人生も街の人間と同じように優しく照らしてくれたらいい。



そうなると信じて、
ジキルは元の道へ、力強く足を踏み出した。







END