衝撃でリンゴは袋から飛び出し、子供もジキルの体に跳ね返され尻餅をついた。



「うぉーい。気をつけろーい!」


ジキルはふざけた調子で子供に手を伸ばす。



子供を引き上げポンポンと頭を軽く叩いた。



「大丈夫か?」



それは十歳前後の少女だった。

長い髪を二つに分けリボンで結んでいる。


「ごめんなさい。リンゴが転がっちゃったわ」




「……ああ、大丈夫だ」



(……変だな)


ジキルは不思議な感覚に見舞われた。



「リンゴ……一つやるよ。食うか?」



少女と初めて会った気がしない。





「……ありがとう!」


にっこり微笑みリンゴを受け取った少女は、ジキルの進路とは逆方向に走って行く。



ジキルは不思議な気持ちを消火しきれずに、少女の後ろ姿を目で追っていた。




すると、人混みの中から少女と同じくらいの背の高さの子供がひょっと現れた。


今度は少年だった。



黒髪の綺麗な男の子。