キョウアイ―狂愛―





何かの間違いかと思った。


――そんな……

そんな事はあってはならない。




一瞬言葉を失い、



「……誰が……誰がやった!?シアンか?」


すぐさま激昂するサイファの言及にクレアは返事をしなかった。




「お前に弾を放ったのち、我を撃つ為の弾が足りない……」



答えにもならない呟きを口にするのを聞いて、そんな事を言っている場合ではないと、

サイファは自分の手首を噛みきった。




「飲めっ……!」

この血を飲めばいくらかは癒されるはず……。



血の滴る手首を差し出すとクレアは悲しそうにかぶりを振った。



「サイファ……もう、いい」


クレアはサイファの傷つけられた手首をきつく押さえる。



「何がいいものか!?
お前は生きるんだ!
お前に……死などふさわしくない!」


君と言う花は、永遠に色鮮やかに咲き誇り僕の魂を照らし続ける。

そうなると思ったから思い残すことなく消える決意がついた。



(なのに『もう、いい』だと?)


先程自分に浮かんだ言葉であっても、クレアが口にする事は我慢ならなかった。






しかし、まだ何か説得しようと息巻くサイファに、クレアは悲しく眉を歪めたまま、



「……いつもそうやって……我の命を尊重してくれた」



その口に微笑を浮かべた。




「お前がいなければ、この世を美しいとは思わなかった」



そう言ったクレアの目から光る涙がこぼれ落ちた。





「……お前が我の生に彩りを与えてくれた……」