キョウアイ―狂愛―





――シアンがとどめを刺す為に戻ってきたのか?





サイファは空を見上げたまま、耳をそばだてた。


上半身を持ち上げ、確認しようとは思わなかった。



そこまでの気力は、もはや湧いてこない。


半分どうでもいいと思っていた。


(クレアが見つからず戻ってきたんだろう。ざまぁみろ)




しかし、足音が近くなり、近づいてくる何者かの乱れた呼吸が聞こえると、

サイファはそれがシアンのものではない事に気づいた。



漏れる吐息は柔らかく、足音にも重量を感じない。




(……ま、さか)


サイファは自分の予感を信じたくはなかった。




足音は自分が倒れ込んでいる瓦礫に到達した。


ガラガラと石を崩しながら向かってくる。




(無事に、逃げたはずだ……)


身体が凍りついたように動かない。

瓦礫を登って来る人物の特定に躊躇した。




(今頃は地下の抜け道をマイメイと二人……)




彼女は


こんな周囲を包囲された逃げ場のない炎の中にいてはならない。







「……サイファ」






呼び声と共に影が差す。


サイファが目を細め見上げると、そこには





頭の中で反芻していた

愛しい半身が



青空を背景に自分を見下ろしていた。