キョウアイ―狂愛―










中庭を取り囲む建物には大方、火がまわっていた。




中庭だけがぽっかりと切り抜かれたように、火をはじいていたが、それも時間の問題だった。



その内に火が這うように移り、踏み荒らされたカトレアも、他の木々と共に短時間で焼き尽くされることだろう。






そんな中、

中庭の出入口、崩れ落ち、出来た瓦礫の山の頂上から、手が、飛び出した。



手は、瓦礫をかき分け、除けられた石がガラガラと音を立て下へ転がった。


続いて男がそこから這い出してきた。




(……油断した)



サイファは貫かれた腹を押さえながら荒い呼吸を繰り返す。



(俺があんな……成りそこないに……)


ゼイゼイと息をつく自分が腹立たしい。




起き上がれずそのまま瓦礫の上に仰向けに寝そべる。



自分の息の漏れる音と、ゴォ、と屋敷を焼き尽くす火の音が聞き取れる。



視界には青空に吸い込まれる黒く渦巻く煙、そして紅い炎。


サイファは屋敷の大半が火に囲まれた事を悟った。








クレアは無事に脱出、出来たろうか?




青空を見つめながら思った。