牛乳配達の少女の無惨な遺体は、果物売りの少年により発見された。
彼の大きな悲鳴に家から出て来た街人も少女の遺体を見て次々に悲鳴を挙げた。
「ヴァンパイアだわ!」
「ヴァンパイアが現れた!!」
トルティアの街は騒然となった。
少女の遺体の近くからは血を引きずるような跡が続いていた。
その微かな道しるべが示す箇所は一つ。
古くから続く貴族の敷地、リドル家の屋敷だった。
街の人々の声はすぐに兵に伝わり、領主、アルザスの耳に届いた。
アルザスは朝早くから決断を迫られる事となった。
「アルザス様、リドル家の門近くに横たわる不審な遺体、数体も民に見られております」
街の人間に探りを入れたローヌの報告である。
リドル家に何か問題が起きて、門番は正体を隠す間もなく果ててしまったようだ。
リドル家に何が起きたかはこの際、問題ではない。
重要なのは、このヴァンパイア騒ぎの中、民に、リドル家に『人間ではない何か』が存在する、と知られてしまった事。
そして、領主である自分とリドル家は親密な関係を築いていた。


