三十年前、リドル家に起こった大火事。
その事件が起こる前からリドル家に出入りしていた少年、シアン=ザハトル。
シアンはリドル家に毎週大量の血を運び入れて生活の糧を得ていた。
一体こんな大量の血液を何に使うんだ?
シアンはいつも不思議に思っていた。
あの大火事の日も血をリドルへ受け渡す予定だった。
しかし、屋敷を包む炎に、シアンも野次馬と同じように突っ立って眺める羽目になったのだ。
そしてクレアを見つけた。
唸るような炎を上げる屋敷を少し離れた敷地内でぼんやり見上げる女。
シアンはクレアを屋敷を訪れた際にたまに見かけていた。
自分に優しく微笑みかけてくれる綺麗な女性。
炎が赤々と照らすクレアの横顔もまた、美しかった。
(なんだ……)
重苦しい雰囲気漂う不気味な屋敷……、
嫌な仕事だとそればかり考えていた。
しかし、いつの間にか自分の心は捕らわれてしまっていた。
不気味な屋敷に住まう美しく気高い一人の女に。
シアンは佇むクレアの手を取ると、
それ以降、トルティアの街から姿を消した。


