キョウアイ―狂愛―





「西の門より不審な輩が押し入って来ました。
門番が四人がかりで行く手を阻みましたが、即座にやられた様子」



人外の我らを容易く倒す侵入者。

マイメイの口振りから相手の尋常ならざる様が見て取れる。




「同胞……と言えましょうか?既に人型を留めていないのですわ」




それが人でない事は確かだった。




「直進しておりこのままでは中庭に行き着くでしょう。

今の内にクレア様をお連れになって避難を……」



中庭はサイファの座る窓の外にある。





――クレアには大輪の豪華な赤い花が似合う。

サイファはずっと以前よりそう考えていた。



それでも中庭の一面に植えられているのは、かつてのクレアが好きだと言った白いカトレアの花。


清楚で一輪では見栄えの悪い小さな花。




「剣を持て」



サイファは中庭を見つめゆっくり瞬きした。





「サイファ様……!」





「その化け物は直々に叩き切ってやろう…………この俺が」





……しばらく後には、中庭の白い花は蹴られて折れて儚く散らばる事だろう。




――その白い花を無粋な来訪者の真っ赤な血で染めてやる


リドル家の清廉なる夜明けを奪った報い……その命であがなえ。



サイファが瞼を開いた時、その口元には邪悪な笑みが浮かんでいた。