「こうなるということは相当に血が不足しているんだ」
サイファは注意深く歯をなぞってから手を引いた。
「血を補給すればすぐに治まるよ?」
言われてもクレアは浮かない顔をしている。
サイファは長い睫毛を伏せ、軽いため息をついた後、
「……いいよ。君には極上の血を捧げよう」
困ったような笑みを浮かべながら、自分のシャツのボタンを外してゆく。
上から一つ、二つ、三つ、……四つ。
白いシャツから肌が露出した。
男にしては白く美しい。
けれど、引き締まった。
シャツをはだけ、首を片方に傾げると、美しい鎖骨のラインが強調された。
「ほら……」
クレアの頭を自分の首元に押し付ける。
「サイファ……っ」
――そう言えば、あたしを襲ったこの屋敷の男は首元に歯を突き立て血を飲んだ。
(でもあたしはそんなの嫌……)
――それにしても……
今まであたしはどうやって暮らしていたのだろうか……?
グリーンリーフでは血なんて一滴たりとも飲まなかったはずだ。
思いながらも、クレアは鼻孔をくすぐる芳しい香りを感じていた。
なんだろう……これは?
吸い付きたくなるようなサイファの香り。
「クレア……早く」
サイファの伸びた爪が自分の首をえぐった。
飛び散る血を数滴、頬に浴びた時、クレアの頭は真っ白になった。


