キョウアイ―狂愛―





数分後、青ざめた顔で現れたリビドーにサイファは剣を向けた。


と、いっても鞘に収まったままのもので、それをリビドーの肩に叩きつけた。



押さえられるまま、リビドーはその場に膝まづく。



「お前を解雇する」


サイファは冷淡に命じた。


「他人の女に現を抜かす暇があるのなら、主の趣味くらい知っておくんだったな」



「僕は、このニゲラの花が大嫌いなんだ」



割れた花瓶に生けられた花は、薄いブルーが美しいニゲラの花だった。


豪華な花ではないが、清廉な感じがサイファに似合っていると、クレアは以前から漠然と思っていた。


そう、この花は以前から屋敷の随所に飾られていたのだ。




「俺は……女に現を抜かしてなど……」


青ざめたまま、リビドーは身の潔白を主張する。




「そうよ、サイファ。リビドーはきっちり仕事を……」


つい口を出してしまったクレアに冷たい視線が走った。





「…………庇うの?」




打って変わって自分に向けられた責めるような目。


ここでサイファと争う事は無意味だ。



それに自分が、言えば言うだけリビドーが不利になる気がして、クレアは口をつぐんだ。