今、サイファに銃を向けたらどう思うだろう?
裏切りに傷ついた悲壮な顔が見られるかもしれない。
(きっと銃を取られて終わりね)
馬鹿げた自分の考えにそっと目を伏せ頭を振った。
「ここがあたしの産まれた土地だもの……。
記憶の欠けたあたしでいいのなら、あなたの傍にいるわ」
今はまだ銃を持つ時ではない。
(もっとサイファが油断してあたしに背を向けた時に、確実に狙う)
クレアはそう決めて、迷いのない瞳をサイファに向ける。
自分の言葉に目の前に立つサイファが大きく目を見開いた
と思った瞬間、
抱きしめられた。
一瞬何が起こったのか理解出来ない程、突然で
息も出来ないくらい、寸分の隙間もなく強く。
クレアは苦痛に眉をしかめた。
「サイファ……っ」
(苦しい)
手で強く押して逃れようともがいてみたが、びくともしない。
故意に苦痛を与えられているのかと思ったが、どうやらそうでもないらしく。


