キョウアイ―狂愛―




変わりゆく景色も目に入らず、決意を固めていたクレアは、




「着いたよ」



サイファの一言に初めて視線を上げた。




「わ……」




馬が止まったのは小高い丘で、

周りには緑が広がる。


うっそうとした森ではなく、見晴らしのよい開けた場所。



離れた街が小さく、遠く地平線まで見渡せる。


地平線には沈む太陽の濃い朱色が広がり二人を染めた。



壮大な景色に言葉を失い見とれるクレアに、サイファは馬を降りて、手を伸ばした。



「……素敵な場所ね」


手を取ったクレアは素直な感想を述べ隣に立つ。



「君のお気に入りの場所だ」



夕陽がまぶしいのか、サイファは目を細めクレアを見つめた。



「そう……」


サイファの視線から逃れ、再び景色に目を向ける。





「……嫌だった?」



ふいな質問にクレアは視線を戻した。

薄い茶の瞳で不思議そうに扇ぎ見る。





「リドルの屋敷に戻る事……、さっきから元気がないから……やっぱり戻りたくはなかったのかと思って……」




自信なくクレアを映す濡れたような黒の瞳。
揺らめいて、焦がれるようにクレアの返事を待っている。


美しい容姿は夕陽に染まると、より一層輝いて見えた。