別れ際、船着き場で涙を流し、自分の手を強く握り締めた、大おばの手は皺だらけで温かかった。
「サイファ様、あまり前線に立たれては……!」
マイメイは血渋きを浴び、敵を切っていくサイファを引き留めていた。
「もう、あらかた、勝敗はついています。
後は、下の者に任せて退いて下さいませ」
ドロイトが友好を結んでる街での反逆者どもの討伐。
クレアを屋敷に置いてから、アルザスは我が兵のようにリドル家の戦力を使用していた。
サイファがそれを心よく思わぬ事は確かだったが、それでも呼ばれるまま、アルザスの屋敷に出向いていたのは、クレアを一目でも確認したいからに違いなかった。
命を受け、アルザスの兵と共に派遣された戦地では、まるで鬱憤を晴らすかのように、主、自ら前線に出ては敵を切り捨てていった。
マイメイは、何かを忘れるように剣を振り、血に笑うサイファをしばらくはやりたいようにさせておくが、度を越え、周りの兵が引く程、敵を残忍に切り刻むサイファを最後には止める。
最近はその繰り返しだった。
「クレア様さえ、戻ってくだされば……」
屋敷の者からは密やかにそんな声が囁かれていたが、
(果たしてクレア様が戻れば全てが上手くいくのだろうか?)
マイメイは最近、大おばの言葉をよく思い出す。


