猫耳姫とメガネ王子

寂しさを振り払い、私はニコッと笑ってそう言った。


本当は、そんな言葉言いたくないのに。


言わなきゃ壱を困らせてしまうから。


「あぁ……」


空中に視線を泳がせて、スッと手を離す壱。


からっぽになった手が、もの悲しく垂れる。



今まで壱と会ってもこんな気持ちになる事はなかったし、他の男に対してこんな気持ちになる事もなかった。


こんなに近い距離にいるのに、どうして今頃になってこんな気持になるんだろう。