「なによ、笑ったらいいじゃない」


ムッとして言うと、壱は首が千切れるんじゃないかと思うほど強く振り、

「い、いいい行くぞ!!」

と、急に態度までたどたどしくなる。


グイッと引っ張られ、私はこけようになりながら壱の後ろを歩いて行く。


私はまだ知らなかったんだ。


壱が、こっそり私のファーストキスを奪っていた、なんてこと――。