隣の先輩


「え?」


 予想もしていない言葉に頭が真っ白になる。


 でも、少しずつ、その言葉を理解していく。


「どうして?」


 行きますとか言えないのが私の弱いところかもしれない。


「賢が、今日これを渡してきてさ、安岡さんと一緒に行ってきたらって。

有効期限が今月末までらしくてさ」


 そう言って先輩が差し出したのはテーマパークのチケットだった。


 そのとき思い出したのは意味ありげに笑っていた依田先輩の姿だった。


 こういうことだったのか。でも、先輩は何で私の名前が出てきたのかとか、不思議には思わないんだろうか。


「残念だったよね。賢の妹が急用で行けなくなったんだろう?」