隣の先輩

 今から何かを言おうと、思っても緊張して言葉が上手く出てこなかった。


 口の中が乾いてきてしまった。


 それでもなんとか彼に言葉を向けようとしたとき、この前と同じ明るい声が聞こえてきた。


「おはよ。今日も一緒に登校?」

 依田先輩だ。


 変な空気の中に、別の温かい空気が入ってきた気がして、胸を撫で下ろしていた。

「そういえば、愛理と同じクラスなんだってね。あいつ、うまくやってる?」


「うまくやっていると思いますよ。学級委員をやっているくらいだし」


 明らかに西原先輩と話をしているときとは違う。


 言葉がすんなりと出てきた。


 そのことになんとなくほっとする。