隣の先輩

 でも、それだけではなかった。


 私の携帯が鳴る。発信者は先輩だった。


 私は昨日、裕樹から聞いたことを思い出していた。


「稜、どうかした?」


 私がそう呼ぶと、電話の向こうからちょっと照れたような反応が伺える。


 そう呼ぶようになって四ヶ月が経過しているのに、先輩はそういう反応を示す。そういうちょっとした反応も嬉しかったりする。


 私は早速、昨日知ったことを先輩の持ちかける。


「昨日、裕樹からおもしろいことを聞いたよ」

「ちょっ、またあいつ」


 先輩の明らかに焦ったような声が聞こえてくる。


 今の先輩がどんな顔をしているのかすぐに分かる気がする。


「で、何を聞いたんだ?」


 気になるのか、私が何も言わなかったら聞いてきた。


「稜の誕生日プレゼントのこと」


「そうだよ。でも、あれはあいつが勝手に」



「でも、その前から何度か聞いていたって。裕樹に」

「そうだよ。今から思えば依田に聞けばよかった」


 確かに愛理なら、そんなことでからかったりはしないと思う。


「裕樹は曲者だから」