隣の先輩

 先輩はまだいじけているのか、返事をせずに私を見る。


「先輩の彼女になりたい」


 先輩は私の肩を抱き寄せるように、自分のところに引き寄せていた。


 ちょうど頭だけが先輩の胸に埋まるような感じになっていて、心臓が激しく鼓動していた。



 私は顔を上に向けると、先輩の顔を覗き見る。


「なりたいっていうか、もう彼女みたいなものだよ」


 先輩の手が私の体を支える手に重ねられた。


 先輩は笑顔を浮かべている。


 先輩を見ていると、幸せな気分になってきて、先輩の言葉にうなずいていた。


 彼女か。


 そんな憧れていた言葉が先輩の口から聞こえてきて、それが現実だと伝えてくれる気がした。


 幸せってこんな気持ちなんだと分かるくらい、胸の奥が温かい。


「一つだけ、お願いしていいですか?」


「何?」


 今まで何度か先輩の家に入って、いつも気になっていたことがあった。


「先輩の部屋に入りたい」


 先輩はその言葉に驚いたような顔をする。でも、その表情はすぐに笑顔に戻る。


「部屋って何もないよ。もう荷造りもしたし」


 もう一度見ておきたかった。


 先輩が扉を開けてくれて、中に入る。