隣の先輩

「じゃあ、俺が決めていいかな。色はどれがいい?」


 私が選んだのはガーネットの入っているもの。


 戸惑っている私をよそ目に、先輩はお店の人に声をかけ、本当にそれを買ってしまった。


 かったばかりの品物を私に渡す。


 先輩がどうしてそんなに優しいのかも分からなかった。


 律儀だからなんだろうか。


 後から宮脇先輩から聞いたけど、卒業式のとき、先輩は後輩や同級生から写真を撮ろうといわれても拒んでいたらしい。


 宮脇先輩と依田先輩相手でも、あまり乗り気じゃなかったみたいだった、と。


 なかなか告白できない私を元気付けるためにそう言ってくれたんだろう。


ありがとうございます」


「どういたしまして」


 私たちは並んでお店を出た。 


 先輩の手が目に映る。


 何度もうぬぼれたくなったけど、そのたびに心を抑えていた。そんな夢みたいなことがあるわけない、と。


 もし、この手をつかんで引き寄せたら、先輩はどうする?


 振り払うことはしないと思う。


 多分、笑顔でどうかした?と聞いてくれるんだろうって思う。