褒められているのか、子ども扱いされているのか分からない。


 でも、いい言葉だけ受け取っておくことに決めた。


 子供っぽさは変わらないかもしれない。


 中身はほんの少しだけ変わったよ。


 人を好きになるって気持ちを初めて知ったから。


「先輩は変わりませんよね」


 冬以降は苦しい気持ちばっかりだった。でも、先輩の優しさを再確認して、もっと好きになっていた。


 その気持ちは春になってもやっぱり変わらなかった。


「少しはしっかりしたと思うけど」


 先輩は不服そうな顔をしていた。


「先輩は前からしっかりしていたと思いますよ」


 その言葉に先輩の顔が少し赤くなる。


 いつだって先輩はしっかりしていて、大人びていて、私の憧れだったんだ。


 大好きで、愛しくて、その気持ちは先輩に振られたとしても心の中に残り続けると思うから。


「行くか」


 先輩の誘いの言葉に乗るように、私たちは家を出ると、お店に行くことにした。


 もううららかな辺りを包むような日差しがあたりに降り注ぐ。


 でも、その日差しがもっと柔らかくなる頃、先輩はもうここにはいない。


 私はそう思うと、少し前を歩く先輩の姿を目に焼き付けるようにじっと見ていた。