「なんだいたのかよ」


「いたのかよって、急に開けないでよ」


「生徒手帳」


 彼の手に握られていたのは紺色のカードくらいの大きさのもの。しっかりと学校名まで確認できる。紛れもなく私の生徒手帳だった。


「ありがとう」


 素直にお礼を言う。


 裕樹は冷めた目を私に向けると、肩をすくめていた。


「ま、いいけど、高校生にもなってボーっとすんなよ」


 裕樹は西原先輩に頭をさげると、扉を閉めた。


 私はそのことで、西原先輩がそこにいたことを思い出していた。


 振り向くと、西原先輩はなんてことはない表情を浮かべている。


「弟さん?」