隣の先輩

 もっと口うるさい父親が家にいなかったことが、不幸中の幸いだったのかもしれない。


 今までこんな遅い時間に帰ったことなんてなかったからだ。


「真由、あなたはどうして」


「申し訳ありません。俺が探し物をしていて、彼女が手伝ってくれたんです」


 私は先輩の言葉に驚いたけど、さっきの約束を思いだす。


「そうなんですか? 連絡くらいしてもらわないと」


「本当にすみません」


 先輩は母親の言葉に反論せず頭を下げていた。


「今回だけですからそんなに謝らないでください。この子が何も言わずに家を飛び出すから悪いんですから。真由は明日学校でしょう。早くお風呂に入って眠りなさい」


 母親も先輩にあまり強いことは言えなかったのだろう。


 先輩は頭をさげると帰っていく。


 先輩は私が怒られないように頭を下げてくれたんだろう。


 本当は先輩は何一つ悪くないのに。


 私が先輩の言ったことを破ったから。


 私は唇を噛むと、家の中に入った。


 家に入ると、真っ先にシャワーを浴びた。


 でも、体が冷え切っていたからかお湯を浴びてもお湯を浴びているという感覚もなかった。