隣の先輩

「分かった」


 先輩は私の手を引っ張り歩き出した。



 先輩は何も言わなかった。


 だから私も何も言わなかった。


 白くて大きな塊が時折、私の肌に触れ、その姿を消していく。


 降り積もる雪が辺りから音を消したみたいに、しんと静まり返っていた。


 静かな世界に、私と先輩の足音だけが響いているような気がして、切なくて、苦しかった。


 でも、宮脇先輩のピアスを見つけることができて嬉しかった。


 先輩の好きな人が誰か分からない。


 先輩がいつか宮脇先輩のことを好きになってくれたらいいって思ったのは本心だった。


 宮脇先輩が先輩の彼女なら忘れられると思ったから。


 家に帰る前に、先輩の携帯が鳴る。先輩は電話をとるとその電話の主と言葉を交わしていた。


 玄関まで来ると、先輩が「口裏を合わせるように」

と耳元でささやく。


「何を?」


「とりあえずよけいなことは言わないこと」


 そしてチャイムを鳴らす。


 すぐに怒った母親が出てきた