隣の先輩

 顔をあげると、そこには宮脇先輩が立っていた。


「どうして? 家に帰ったんじゃなかったの?」


 彼女は息を切らして、私のところに駆け寄ってきた。彼女の唇から白い息が漏れる。


「宮脇先輩はどうして?」


「振り返ったら真由ちゃんが戻っていくのが見えたから心配になって探していたの」


 私は水滴のついたピアスを右手に乗せ、宮脇先輩に差し出した。


 彼女は驚いたように目を見開いていた。


「宮脇先輩の気持ち、失くしたらダメですよ。宮脇先輩は自分の気持ちに素直でいてくださいね」


 だってこんなに素敵な人で、一度は先輩から好きになってもらえたんだもん。


 また、先輩から好きになってもらえるかもしれないんだから。


 無理といわれた私とは違うから。


「真由ちゃん、これを探してくれたの?」


 私は先輩を見て、笑顔を浮べる。


「先輩は本当に宮脇先輩とお似合いだって思うから、可能性があるなら諦めてほしくなかったんです」


 過去に二人の間に何があったか分からない。でも、こういう形は悲しすぎるから。


 それがわがままでしかないことも分かっていたんだ。


 もしかしたら宮脇先輩をもっと苦しめてしまうかもしれないってことも。


 それでも嫌だったんだ。