隣の先輩

 そう言うと、宮脇先輩は笑っていた。


「でも、これで稜のこと」

「今日、どこに行ったんですか?」


 私は宮脇先輩の言葉を打ち消すようにそう言っていた。


 彼女はあっけに取られたような表情をしていた。


「え? 真由ちゃんを送って、ぶらっとして、この近くに稜と昔遊んだ公園があるの。

そこでボーっとしていて、携帯を取り出して帰ろうとしたところ」


「そのポケットの中を触ったのはその公園だけなんですね」

「そうだけど。どうかしたの?」


 私は宮脇先輩の手に触れる。彼女の手は氷のように冷たかった。


 彼女は自分の手が冷えているという実感もないんだろう。


「帰りましょうか」


 私は宮脇先輩と途中まで一緒に帰る。送るという彼女に大丈夫だと言い聞かせ、わかれると、彼女が家の方向に向かうのを確認して引き返していた。


 
 公園に戻り、ピアスを探そうと思ったのだ。


 そうした理由は嫌だったから。


 少なくとも先輩と一度はつきあっていたし、まだ大学に受かれば一緒にいられる。


 一度、先輩から好きになってもらえたんだ。


 四年あれば先輩の気持ちも変わるかもしれない。


 先輩が好きになる可能性だってある。だから、忘れないでほしかった。


 小さなピアスで、宮脇先輩の気持ちを決めないでほしかった。