「急ぎのようだったらまたかけなおすけど」


「なんでもないです。どうかしましたか?」


「いや、裕樹から今朝、お守りをもらったんだけど。あれって安岡がくれようとしたやつ? 裕樹が真由からだって言っていたけど」


「はい。初詣に行ったときに買ったから、先輩にって思ったので」


「そっか。ありがとう」

 
 そう言った先輩の言葉になんだかほっとしていた。


「何かお礼するよ。何かお礼するよ」


 思いがけない言葉に、つい過剰反応してしまいそうになる。


「お礼なんて。そんなにたいしたことじゃないですから」

「じゃあ、誕生日プレゼントもかねて」


 誕生日という言葉にドキッとした。私は先輩にそんな話をした記憶がなかったからだ。


 先輩はすぐにつけ加えるようにして言う。


「今日、誕生日なんだよな? 受験が終わったら、誕生日プレゼントを買ってやるよ」


 誕生日って誰に聞いたんだろう? 裕樹かな?


「でも、私は先輩に何もあげてないのに」

「いいよ。俺があげたいからあげるだけだから」


 そう言うと、先輩が笑うのが分かった。