隣の先輩

「やっぱりなんでもないです。また後から来ます」


 私はそう言うと、謝って自分の家に飛び込んだ。


 渡す前に確認していないなんて最悪だ。


 私は家に戻ると、脱衣所に行く。いつも私の荷物を入れるカゴの中には何もない。


 母親は洗濯をするときに、いつも私の荷物をそこに置くからだ。


 リビングに入ると、香ばしい香りが鼻に届く。


 テーブルの上を見ると、鳥のから揚げにポテトサラダなどが置いてあった。


 私は調理をしている母親に問いかける。


「コートの中に入っていたお守りは?」

「脱衣場においていたわよ」

「ないんだけど」

「さあ、誰か持って行ったんじゃない?」


 母親はそう軽い言葉で言う。


 誰かって、そんな気軽に片付けないでよと言いたくなって言葉を飲み込む。


 今はそんなことを言っている場合じゃないんだと思ったからだ。


 もしかしたら部屋においているかもしれないうことを期待して、部屋を覗く。


 でも、探してもそれらしいものは見当たらなかった。

 肩を落とすと、ベッドに腰を下ろす。



「こんなことになるなら早く渡せばよかった」