隣の先輩

 でも、宮脇先輩が一人ということは好都合なのかもしれない。


「先輩と一緒に回ったらどうですか? 私は愛理たちと回りますから」

「え?」


 宮脇先輩は驚いたように私を見る。その顔はさっきよりももっと赤くなっていた。


「いいよ。そんな。折角みんなで来たんだし」


「気にしないでください」


 私は宮脇先輩の言葉に笑顔で答える。


 私はそのまま二人の傍を離れた。


 その間、一度も西原先輩の顔を見ることができなかった。


 先輩が嬉しそうな顔をしていたら、もしかしたら心を痛めてしまうかもしれないから。


 それに少しだけでも先輩と回れて満足だったから、これでいいと心から思えたからだった。


 私は少し離れると、依田先輩や愛理を探すことにした。


 でも、ごったがえす人ばかりで簡単に見つけることはできない。


 愛理の携帯を鳴らすが、ざわつきに音が呑み込まれているのだろう。



 彼女の声が電話口から聞こえることはなかった。


 依田先輩の番号を表示して、電話をしようとしたときだった。


 背後から聞きなれた声が聞こえてきた。