「そんなことないよ。ありがとう」
愛理の気持ちがすごくうれしかった。
もう私の気持ちに大まかにだけど決着はついていたけど、そのことは黙っておくことにした。
そのとき、依田先輩と目が合う。
彼は肩をすくめ、意味あり気に微笑んでいた。
「じゃ、俺は一人でぶらっとしてくるから」
依田先輩はそう言うと、私たちに手を振る。
「ちょっとお兄ちゃん?」
愛理が驚いたように先輩を呼び止めるけど、先輩は聞く耳を持っていないみたいだった。そのまま神社の中の人ごみのに消えていく。
「全く」
愛理は肩を落とすと、そう呟いた。
「咲は私と回ろうか。で、真由は先輩と回ってきたら?」
その直接的な物言いに驚いていたが、先輩は特別気にしていないのかさっきと同じような顔をしている。
先輩は私たちを見ると、息を吐く。
「俺は賢を探してくるから三人で回れば?」
先輩は私たちに気遣ったのかそう言っていた。
「でも、お兄ちゃんはああ見えて頑固だから、言っても聞かないと思いますよ」



