先輩の近くにいた裕樹がいつの間にか私のところまできていて、背中をぽんと押していた。


 私はそれにつられたように先輩のところまでいく。


 先輩は持っていたものを後ろに隠す。


「ありがと」


 先輩はそう言うと、私に頭を撫でていた。


 その顔はすごく嬉しそうに見える。


 ただ、おめでとうと言っただけでそんなに喜ばれると、正直戸惑ってしまいそうな気がする。


 でも、まさか裕樹が先輩に何かをあげると思わなかった。


 裕樹があげて、私があげないのはどうなんだろう。


「プレゼント、ほしいものありますか?」

「気持ちだけでいいよ」


 そう先輩は返す。


 何か買えばよかったかな。食べ物とか形に残らないものでも。


「じゃあな」


 先輩はそう言うと帰っていく。


 私はそんな先輩を見送っていた。


 リビングに戻ると、裕樹は先輩から借りた本を読んでいた。


 昔読んでいた本か何かかな。