隣の先輩

 外はまた冷たい雨が吹き仕切っていた。


 それでも念のためと裕樹の姿を探そうとしたとき、頭に何かかかかるのが分かった。


 反射的に顔をあげると、大きな傘が私の体をすっぽりと覆い隠す。


 振り返り、そこに立っていた人の姿をみて、返事に詰まる。


「どうして?」


 後ろに立っていたのは電話で迎えに来ると言っていた弟ではなく、先輩だった。


 先輩は少し困ったような笑みを浮かべている。


「裕樹と家の前で出会ってさ。どうせ、こっちの方向に用事があったから、買い物ついでに向かいに行くことになった。

雨降っているから、風邪を引いたら大変だろう?」


 そう言うと、先輩はいつも私が使っている水色の傘を差し出した。



 裕樹から渡されたのだろう。

「そうですか」


 先輩の顔があまり見れなかった。


 傘を受け取る。そして、先輩から少し離れると、それを差す。


「荷物を持つよ」


 私が返事をする間も与えずに、先輩の手が私に触れる。