「あ、あの」



 このタイミングで出て行くと、彼女が告白されるのを聞いていましたと伝えるようなものだったことをすっかり忘れていた。


 私の戸惑った声の意味を察したのか、宮脇先輩は困ったような笑みを浮べていた。


「聞こえていたんだ」

「はい」


 嘘を吐いても仕方ないことは分かっていたので、そのことは認める。


 でも、それ以上続ける言葉を見つけられなかった。


 大変でしたねと言うわけにもいかず、上手く流すような言葉も見つけられなかった。


 今でも西原先輩のことが好きだと分かっていたはずなのに、胸が痛い。


 先輩は彼女のことをどう思っているんだろう。


「なんかダメだよね。忘れないといけないのに。本当、自分が嫌になっちゃう。全然相手にされていないのに」


 その言葉に思わず宮脇先輩を見ていた。


 ──忘れるって西原先輩のこと? 相手にされていないってどういうことなんだろう。


 そんな気持ちが顔に出ていたんだろう。


 宮脇先輩はさっき好きな人の話を振られたときのように、悲しそうな顔をしていた。