結局、先輩の誕生日は聞けなかったけど、それでも褒められたからいいかな。


 私は玄関を開けると、家の中に入る。


 リビングに行くと、珍しく裕樹がリビングにいた。


 また顔がにやけていたかもしれないので、自分の頬を押さえるように裕樹を見る。


「どうしたの?」

「それはこっちの台詞だと思うんだけど」


 裕樹は淡々とそう語る。

「ま、いいか。十二月三十一日だってさ」

「何が?」

「真由の一番知りたいこと」

「先輩の誕生日? 私が知りたがっていたってことを言ったの?」


 裕樹は私の顔を見て、わざとらしくため息を吐く。


「稜には黙っていてやったよ。感謝しろよな」

「ありがとう」

「ケーキ二つね」


 そんな憎まれ口を叩いているけど、意外と優しいところがあるんだ。


 先輩は私と同じ冬生まれなんだ。星座も同じなので誕生日も近い。


 でも、私はそのとき気づく。