隣の先輩

 顔がものすごくにやけている気がした。顔の動きから、そう感じる。


 両手でほっぺを抓って、そのにやけを戻そうとする。


「どうかした?」


 私が突然ニヤニヤしだして、顔を抓ったからだろう。


 先輩は変な顔をして、私を見ていた。


 でも、手を話すと、またにやけてしまいそうだった。


 とりあえず笑顔じゃなくて、真顔になろう。深呼吸して、気持ちを整える。


「何でもないですよ」


 声がいつもより、ニオクターブくらい低いだけじゃなくて、棒読みのような言葉になってしまっていた。


 先輩はまた変な顔をして私を見ていた。


「変なものでも食べた?」


 なんで先輩は私と食べ物をそうイコールで考えるんだろう。


 よくわかんない。


「そんなことないです」

「ま、早く学校に行かないと遅刻するよ」


 そう言って先輩は私の頭を撫でる。


 私は顔が赤くなるのを感じながらも、できるだけ真顔でいるように心がけていた。