隣の先輩

 「何か言いたいことがあるなら聞くけど」


 西原先輩は怪訝そうな顔で、私の顔を覗きこむ。


「何でもないです」


 思わず反応して、身を仰け反らせていた。


 朝、西原先輩と会い、一緒に学校に行くことになったわけだけど、つい昨日のことを思い出して、物思いに耽っていた。


 どうして別れてしまったのとか、誕生日のこととか。


 でも、どちらも先輩に聞けなかった。


 先輩に出会って親しくなった五月上旬くらいなら、誕生日のことも気軽に聞けたかもしれない。


 でも、今はそんなことさえも、余計に意識して聞けなくなってしまっていた。


 気にしていることがおかしいってことも分かっていた。でも、聞けなかった。


 そのとき、手に持っていた荷物が軽くなる。


 先輩の手には私がさっきまで持っていたスケッチブックが握られていた。


 美術で使うので、今日、もって行かないといけないことになっていたものだ。