隣の先輩

 文句を言ってくれたほうが可愛げがあるって思うくらい。


 というか、何を食べるときも淡々としているから。


「そうなんだ。偉いね。私の弟は好き嫌いが多くて困っているんだよね」


「来年からは弟に家事を頑張ってもらわないといけないから、あまり好き嫌いは困るんだよね。

それを結構悩んでいて。嫌いなものって作らないでしょう?」


 それはなんとなく分かる気がする。でも、もう一つ引っ掛かることがあった。


「家事って、先輩が家事をしているんですか?」


「そうだよ。私の家、お母さんがいないからね」


 そう言うと、宮脇先輩は笑顔を浮かべていた。


「無神経なことを聞いて、ごめんなさい」


 宮脇先輩は肩をすくめて笑顔を浮かべる。


「そんなことないよ。気にしないで。お兄ちゃんが本当に不器用だから、中学に入った頃から私がしているの」


 中学に入った頃から。


 自分の中学生のときを思い出して、半ば信じられない気分になってきていた。


 今の私よりも三歳も下。


 でも、それを実際に先輩はやっていたわけで、ただすごいなという気持ちでいっぱいになる。