「隣の家の人だよ。学校までの道が分からないから一緒に行っているだけ」 「そうなんだ。じゃ、俺が毎日でも送り迎えをしてあげようかな。名前はなんて言うの?」 どこから私に話しかけてきたんだろうと思うほど、自然に言葉を並べられた。 とりあえず、名前を言えばいいんだろう。 「安岡真由です」 「真由ちゃんか」 突然「ちゃん」をつけて呼ばれたことにドキッとしていた。 「こいつは無視していいから、行こう」 西原さんはそう言うと、歩き出す。 でも、私は人を無視することができなくて、彼を見つめていた。