隣の先輩

 私は西原先輩の好きな人を知ったとき、そう思えるんだろう。


 でも、そんな自信はなかった。


 自分が敵わないと思う人なら、諦められるかもしれない。


 でも、それは諦めるであって、応援するとは違うから。


 最初に咲に惹かれたのはそんなところもあったのかもしれない。見た目とか、年齢以上に優しい雰囲気が漂っていた。そうしたものが表に出てきていたんだろう。


 彼女はその人のことが本当に好きなんだって分かった。


 咲の言っていた好きな人って誰のことなのか知りたい気持ちはあったけど、それ以上追求しないことに決めた。


 いつか彼女が自分の口から言ってくれるまでこのままでいようと決めたのだ。


 滅多に自分の我を通さない彼女から言われた言葉だったから。


「愛理とね、西原先輩もそのこと知っていたんだ。私を見ていたら、なんとなくそういう気がしたって聞かれた。

真由には黙っておいてもいいと思うって言ってくれたけど、隠しごとをしているみたいで心苦しくて。変な言い方しかできなくてごめんね」


 先輩と咲の会話を思い出していた。


 二人はそのことを話をしていたんだろう。


 多分、先輩が話をしようかと言っていたのは、咲が迷っていることを知っていたから。


 愛理が話さなくていいと言ったのは、知ったら私が迷うことを知っていたからかもしれない。愛理が気づくのはなんとなく分かる気がする。


 でも、先輩も意外と鋭いんだなって思った。


「人って自分に向けられた好意には気づかないからね」


 私の気持ちに気づいたのか、咲は肩をすくめていた。


 今日、愛理が依田先輩と帰ったのは、このことを知っていたからなんだろうと思った。私と咲が話をできるようにするため。