私をからかうために嘘をついたとは思えなかった。
「はっきりとその人の気持ちは分からないから、真由に本当のことを言えないのは私のわがままなの。ごめんね」
彼女はそこで言葉を切ると、カップに口を寄せる。そして、ゆっくりと言葉をつむぎだす。
「真由が先輩のことを好きなのは知っているし、西原先輩と両想いになってくれれば嬉しいと思っているのは本当だよ。
でも、真由の気持ちも変わるかもしれないし、その人のことを好きになるかもしれない。その間に、その人が真由のことを好きになるかもしれない。
真由がその人を好きになったら好きだと言われたときに、私が理由で断ってほしくないって思うから。告白されてね、その人のことをきちんと見て、返事をしてほしいって思うんだ」
「でも、誰か分からないのに」
「真由は自分の気持ちに正直でいてくれればいいと思うの。真由だって、自分に好きと言ってくれた人が私の好きな人だったら気を遣うでしょう? それがたとえ西原先輩だとしても」
彼女の言ったことはすごく当たっていた。そうだと思う。告白を受けるか受けないかはともかくとして、それが友達の好きな人だったら悩むとは思う。
「私の気持ちは届くことがないのは分かっているから、だからもう少しだけ待って欲しいの。この気持ちが思い出になるまで。自分勝手でごめんね」
「辛くないの?」
「それはないかな。彼が好きな人と幸せになってくれたら私も嬉しい。その相手が私じゃなくてもね」
彼女はそう優しく笑っていた。
彼女の言葉も友人としていつも見ている彼女のものとはどこか違っていて、すごく優しかった。同時にその言葉の中身にも驚いていた。
私と同じ年なのに、見た目とかそんなことは関係なくて、本当に大人だと思えたからだ。
私は好きな人と、自分が好きな人が幸せになってほしいなんて考えたことなかった。叶わないと分かっているくせに、ただ私を好きになって欲しいとばかり考えていたから。
考えていたら、ああやって逃げ出したりはしなかったかもしれない。



