隣の先輩

「やっぱりそう思わせちゃったんだよね。ごめんね」


「私こそ、話を盗み聞きしてごめんなさい」


 咲は首を横に振る。


「気にしなくていいよ。でも、その人は西原先輩じゃないよ。西原先輩はかっこよくて優しいけど、好きな人とは違うから」


 西原先輩じゃないんだ。他に知っている先輩といえば、依田先輩もいるけど、他にも上級生はいるわけで断定するのは難しい気がした。


 だから、こう尋ねていた。


「誰か聞いていい?」


 彼女は首を横に振ると、目を細めていた。


「秘密。今まで、真由に黙っていてごめんね。でも、どうしても真由には言えなかったんだ。その人、真由のことを気に入っているから」


 一瞬、咲の言葉が理解できなかった。


 気に入っているってどういうことなんだろう。


 好きとか?


 自分で考えて否定する。


 お世辞じゃないけど、そんなことを言われたことは一度もない。


 だから、好き以外の意味での気に入っているか、咲の勘違いとしか思えなかったのだ。



 でも、彼女はそんな心を見透かしたように、目を細め、天を仰いでいた。


 そのときの咲の様子はどこか物憂げで切ない気がした。