隣の先輩

「映画のチケットをもらったんだ。この前言っていた映画を一緒に見ない?」


「え?」


 私は思わず戸惑っていた。


 先輩と一緒に映画を見たことを誰にも言ってなかったからだ。


 咲は立ち上がると、机まで行く。そして、映画のチケットを私に見せた。


「人からもらったんだけど」


 彼女が差し出したのは劇場招待券のチケットだった。


「その映画先輩と一緒に見たの」


 といっていいのか分からないけど。先輩は眠っていたし。


「そうなの?」


「この前、愛理の家に泊まった翌日に連れて行ってくれたの」


「先輩は優しいね」


 咲は嬉しそうに笑っていた。そんなに嬉しそうな顔をしていたのは、先輩のことを好きなわけじゃないのかな。


「じゃ、別の映画を見に行こうよ。これって劇場招待チケットだからさ」


「ありがとう」