隣の先輩

 そのとき、頬を何かをなぞるのに気づいた。


 顔をあげると、先輩が目をあけて私を見ていた。


「ごめんなさい。そんなつもりじゃ」


 どう考えても、寝ている先輩の顔を覗きこんで、額に触れていたら、誤解されてもおかしくない。


 私が距離をとろうとすると、腕をつかまれた。


 私の腕をつかんだまま、先輩は体を起こす。


「どうかした? 今日、夕方から元気がなかったみたいだけど」


 夕方と聞いて思い出したのが、咲と先輩との会話だった。


 でも、そんなことはいえなくて、ただ首を横に振ることしかできなかった。


 そのとき、先輩が私を抱き寄せていた。


 突然のことに混乱していたんだと思う。


 どきどきしながら、やっと言葉を引っ張り出す。


「何、するんですか?」



「泣きそうな顔をしていたから」


 少し間を置いて、先輩が言葉を続ける。