先輩から電話がかかってくることなんか当然ない。


 メールが届くこともない。


 それはすごく当たり前のことだって分かっていた。


 その度に、あのときタクシーに乗り込んだ二人の様子を思い出してしまい、

胸の奥が締めつけられたみたいに苦しくなってくる。


「真由」


 私は聞きなれた声を聴き、顔をあげた。


 そこには髪の毛を一つにまとめ、花柄で、胸元にフリルのついたキャミソールワンピを来た咲の姿があった。


 彼女は黒のカーディガンを上から羽織っている。

 私は持っていた携帯を片付ける。


「じゃ、行こうか」


 私は咲と学校の前で待ち合わせていた。


 今日は愛理の家に行く日だったので、咲に連れていってもらうことになっていた。