隣の先輩

 ゆっくりと体を起こす。寝ぼけた目で私を見ているのに気づいて、電話が鳴っていることを伝えようとしたときだった。


 先輩の手が私に伸びてきた。そして、頬をほんの少しだけ撫でた。


 嫌じゃない。でも、驚いて思わず声を漏らす。


「先輩?」


 その言葉で先輩の手がぴくりと震えた。私に触れていた手が離れる。
 


 先輩は体を起こし、思わず体を起こしていた。


 私の想像以上に先輩が驚き、私が驚いてしまうくらい。


「悪い。えっと、何でここに」


 先輩の顔が今までにないくらい赤くなっていた。


 それを見て、私も顔が赤くなっていた。


「あの、待ち合わせ」


 といいかけて、我に返る。そうじゃなくて、電話のために部屋に入ったんだ。


「電話がなってますよ。外で待っていますから」


 先輩の顔を見ているのが恥ずかしくなり、慌てて先輩の部屋を飛び出していた。