隣の先輩

「七時間です、じゃなくてさっき出て行ったばかりなのに、どうしてここにいるんですか?」

「戻ってきたから」


 それはそうだけど。正論で返されると、それ以上言えなくなる。


「ゆ、裕樹は?」

「友達に呼ばれて、少し出かけるってさ。その間、留守番していてくれって」


 他人に留守番を頼むって何を考えているんだろう。


 それだけ先輩を信頼しているってことなんだろうけど。


 先輩に頼むべきことじゃないのは明らかだった。


「ごめんなさい。裕樹は何を考えているのか。暇だったでしょう? もう起きているから大丈夫ですよ」

「そんなことないよ。誰かさんがよだれ垂らして寝ていたから、おもしろくて」


 よだれ?


 私は思わず右手の甲で口元を拭う。でも、それらしいものはなかった。


 そんな私を見て、先輩は笑っていた。


「冗談だよ」


 私は頬を膨らませると、先輩を見た。