隣の先輩

「明日からは一人で来ないといけないから、正しい道を教えておこうかなと思ってさ」


 その言葉に顔が赤くなるのが分かった。


 迷ったことが恥ずかしかったこと。


 そして、そこまで気を遣ってくれていることがうれしかったから、だ。


「本当にごめんなさい。お願いします」 


 そう言ったとき、思い出したのが母親のこと。


 そんな私の気持ちに気づいたのか、西原さんは思い出したように言葉を続ける。


「君のお母さんとさっき会ったけど、タクシーで帰るからって言っていたよ」


「わざわざごめんなさい」



 なんか迷惑をかけてばかりだ。


「謝らなくていいよ。帰ろうか」