隣の先輩

「宮脇先輩に話があって」


 先輩がいるけど、このまま彼女に聞いていいんだろうか。


 一応、私を庇って嘘をついた可能性もあるわけだし。


「私に? じゃあ、途中までだけど一緒に帰ろうか」


 私はうなずく。


 宮脇先輩は振り返り、教室内を見渡していた。

「私は安岡さんと門のところにいるから、鍵を返してきてね」

「分かったよ」


 そう面倒そうな先輩の声が聞こえてきた。


「行こうか」


 彼女は首をかしげ、優しく微笑む。


 彼女は鞄を持っていなかった。


 多分、先輩が気遣って持つと言ったんだろう。