隣の先輩

 それともただの偶然なんだろうか。それはよく分からなかった。


 私は依田先輩を見る。


 依田先輩は最初は軽い言葉を投げかけてきて、びっくりしたけど、すごく優しい人なんだって今は分かる。


 彼を見ていると、そのことがよく分かる。


「でも、そんなに濡れているし」


 彼の腕には無数の水滴がかかっていた。


「いいよ。これくらい拭けば乾くし」


 私は鞄からタオルを取り出し、先輩に渡した。


「これ、使っていないから、よかったら使ってください」


 依田先輩は驚いたように私を見ていた。


「いいよ。そんな」

「でも、せめて」


 それくらいはさせてもらわないと悪い気がする。


 私の気持ちに気づいたんだろう。依田先輩は笑顔を浮かべていた。