隣の先輩

まだ、ざわつきが十分に残っている昇降口で、先輩とその人の会話だけがマイクをつけたみたいにしっかりと耳に届いていた。


「急に雨が降り出してびっくりしたよね」

「今日、傘忘れてさ。本当、困る」


 彼女の言葉に西原先輩はそう返事をしていた。


「珍しい。いつもは滅多に忘れないのに」

「ちょっと朝、寝坊してさ」


 そんな他愛のない会話を続けている。


 そのとき、愛理が私の肩を背後から押した。


「行ってきたら? 一緒に帰りましょうって」

「でも、私は」

 確かに私だったら、家も近いし、この前のテーマパークのお礼ってことにしたら、それでいいんだと思う。